株式会社ラッシュインターナショナル代表取締役・倉田満美子氏。女性で構成されたマーケティング会社として、リサーチやWebサイト制作、デザインを手がける。
「五十代を過ぎると、否応なく気づかされることがある」
四半世紀に渡って企業経営に携わってきた倉田氏は、静かにそう語り始めた。「衰えも感じるし、何でもないところでつまずいたり。徹夜はもう無理だし、回復も遅い。若い社員より記憶力はまだ良いんですけど、『あれ、なんだったっけ』ということも多少出てきます」
58歳。20代で大企業を辞め、パソコン教室からWeb制作まで、時代の変化を捉えながら事業を展開してきた彼女が、今、新たな視点を見出していた。
「上の世代の方々が、悠々自適に人生を楽しめるはずの時期に健康を害されるのを見ると、『この人の人生は何だったんだろう』って思ってしまう。65歳で退職して3ヶ月後に癌が見つかって、ガリガリになってしまう。そういうのを見て、私はこうはなりたくないと、50歳くらいの時に強く思いました」
――起業のきっかけを教えていただけますか?
「私、本質的に理不尽なことが苦手なんです」と倉田氏は笑う。トヨタ自動車時代、彼女が最も納得できなかったのは、能力主義でない評価体系だった。
「同期同士でご飯を食べていて、『税金引かれてむかつくね』って話してたら、私より給料が多い子がいて。なんでだろうと思ったら残業代だった。私は残業せずにさっさと仕事を終わらせて、彼氏とエアロビに行ったりしていたので。なんで私の方が沢山仕事をやっていて、できなくて残っている人の方が給料が多いんだろう」
上司に「なぜそれをやるんですか?」と問うても、返ってくる答えは「そういうものだから」。この言葉に納得できない彼女は、26歳で起業を決意する。
「理不尽なことが苦手で、それだったら自分でやって全ての責任を自分で取りたい。若気の至りだったかもしれませんが」
――事業を展開していく中で、大切にされてきたことは?
「私、困っている人を見つけるのが天才的に上手なんです」
パソコン教室の時代から、教科書通りの指導ではなく、企業が本当に困っていることを見抜き、解決策を提供してきた。その視点は、後の事業展開の核となっていく。
さらに、パソコン教室はいずれ低迷していくことを見越して、女性目線のマーケティングに切り替えていった。大企業内部から「入力作業」など困りごとを吸い上げ、Webサイト制作への業務を拡大。在宅でもできる作業ということで、20-30人のスタッフを集めていった。
パートから社員への転換期には「固定支出となるが、やるしかない」という覚悟で臨んだ。「人が困っていることにはお金を出す。だから、やれることは無尽蔵なんです」という気づきは、新たな可能性を開いていった。
リサーチ業務も手がけるようになり、現実を見える化するだけでなく、改善策の提案まで行うことで、多くの企業のファンを獲得していった。
「アンケートをやっただけで満足する人もいる。でも私からすると、それはお金をどこかに捨てたようなもの。なんか妙な正義感があるんですよね。得させてあげなきゃ。お金をもらったから、それでいいじゃんじゃなくて、本当によかったねという状態を、相手も私も思いたい」
――健康面でも長年の課題があったと伺いました。
「そうなんです。私、むちゃくちゃ健康なんです。人間ドックでも何一つ引っかからない。ずっとオールAなんですが、唯一の悩みが胃腸の弱さでした。週に1-2回は必ず下痢になる。ひどい時は2-3回。電車に乗るのも怖いくらいでした」
緊張してなるわけではない。むしろメンタルは人一倍強い。「生ものが合わないとか、何かが駄目とか、そういう原因も特定できない。突然『やばい』ってなる。30分くらいで下痢になることもある」
――様々な対策は試されたのでしょうか?
「ヨーグルトを食べてみたり、ビフィズス菌を摂ったり、ヤクルトを飲んだり。一ヶ月ずつ毎日試してみても、全然変わらなかった」
そんな時、腸内細菌の入れ替え周期について詳しく説明を受けた。坂田さんの指示でKINTO、ファイバー、イーストンを飲み始めたところ、「最初は3-4ヶ月かかると言われましたが、なんと2週間でもう変化が。そこから9ヶ月、ずっと症状が出ていないんです」
「なぜ今までの対策が効果がなかったのか、すごくわかりました。必要な量が恐ろしく足りていなかった。パッケージには『善玉菌たっぷり』って書いてある。でも一般の人は、どのくらいの量を摂取すればいいのか、そもそも単位は何なのかも分からない」
この気づきは、彼女が四半世紀かけて培ってきた経営者としての感覚と確かに響き合っていた。表面的な数値や謳い文句ではなく、本質的な理解に基づく解決の重要性。それは、彼女がビジネスの世界で常に追求してきたものと同じだった。
――これからの展望についてお聞かせください。
「親ができる最高のプレゼントは、教育であり、健康習慣であり、選択肢を増やしてあげること」と語る倉田氏。現在は大学院でアントレプレナーシップや企業戦略を教える傍ら、3人の孫の成長を見守る。
「子育ての頃は起業に必死で、そんなすごいことも何もさせてやれなかった。でも今は会社もそれなりになって、経験させてあげられる立場になった。お金がないとできない選択って世の中にはいっぱいある。経験させることで視野が広がる選択肢を提供したい」
もともと教員を目指していて、当時の男女平等な仕事として教員か公務員ぐらいしか思いつかなくて。それは教えるのが好きなので、自分が分かってることを人に理解してもらうっていう根底が好きなので。
先生に向いてると思います。一対一も好きですけど、教職の面白いのは、自分が一度話したことが百人に伝わるっていうのがまた面白いなと。
四半世紀の経営で培った「本質を見抜く目」は、今、新たな気づきをもたらしていた。それは単なる長寿や体力維持の問題ではない。本質的な理解に基づく正しい対策の重要性。その気づきは、次世代への大切なメッセージとなっていた。
株式会社ラッシュ・インターナショナル
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