高橋選手にとっての熱狂を教えて頂けますか?
父親がもともとバイク好きで、それきっかけで僕をバイクに乗せ始めたのは3歳の頃だったようです。記憶はないのですが (笑)
学校が終わると家から20 分ぐらいのサーキット場に行って、夜間練習「ナイト走行」みたいなことを日々繰り返していました。やりたいこともできず、常にサーキットに行き練習です。友達とも遊べない日々が何年も続きました。
最初はなんでこんなことしなきゃならないのだろう? みたいに思っていたんですが、実際レースに出ると、負けたり勝ったり。勝ったらまた勝ちたい!! というふうに、段々と自分の意志でやるようになって行きました。その後、ずっと勝ちにこだわり続けて、今に至る感じですね。
勝つことに熱狂していたと言えると思います。
毎日のようにサーキットに行き、練習していたからこそ今があると思うので。もし、それをやってなかったらどうなっていただろう? なんて想像もできないですね。
今34歳なので、30 年間同じことを続けることって簡単じゃないと思うのです。
勝つこと自体そんなに簡単ではないですから。優勝ってそれこそ何十人の中で一人しかなれないポジションですから、当然無敵でもないので、常に勝ってはいられないわけです。みんなが勝ちを求めて競う中で勝った時は、もう、嫌なことも瞬間で忘れられますね。
その時 (勝った時) の感情ってどんな感じですか?
8耐は特にですけど、1~2時間おきに走らなくちゃいけない。最後の方は肉体的にも疲れてくるし。ゴールをして結果が優勝だったら、疲れもふっ飛びます。
嬉しい余韻がどれぐらい続くのかで言うと、僕はもうその日、その翌日ぐらいまででしょうか。周りはある程度長い期間おめでとうと言ってくれるのですけど、当然次のレースもあるし、そのための準備もしなくちゃいけません。
純粋に嬉しいですし、達成感でしょうか。僕だけじゃなくて周りの協力してくれているチームメンバーだったり、スポンサーさんがいての優勝だと思うので、少なからず恩返しはできているかなと思います。
チームとの関わり方は?
自分だけの努力ではなく、周りの人の応援とか支えが絶対必要です。
走り出したら僕が頑張るしかないのですけど。
実は2~3日前にサーキットで初走行してきたのですが、今年から新しいモデルのマシンに変わり、そのデリバリーが間に合うか間に合わないかの瀬戸際な状況でした。チームや周りの人たちは間に合わせなきゃいけないという気持ちで、しっかりマシン作りをしてくれていて、陰の努力に支えられていることを実感します。
常に一緒にいるわけじゃないのですけど、見えないところでいろいろやってくれたりとか、考えてくれたりっていうのを当然僕は認識しています。そういうのがあるから、結果で返さなきゃみたいな。優勝したらみんな喜んでくれますし、それはみんなで喜びたいですね。
口では表現しあったりはしませんが、わかり合っている仲というか。説明しなくてもちゃんとコミュニケーションが取れているし、信じあっている仲だと思うので。信頼して、僕は全力を尽くし、最高の結果を求めて走っているという感じでしょうか。
小学校時代のレースの時から、日本で1 位になりたいとか、世界選手権で 1 位になりたいとか、当然そういうことは考えていました。
現実的にメーカーさんとの契約ができることになって、そこまで成長できたなっていう喜びはありました。メーカーさん(僕はホンダなんですけど)との契約イコール、お金をもらえての仕事(プロフェッショナル)になったわけですから。
これから、やろうとしていることをお聞かせ願えますか?
直近で言ったら8耐の記録更新ですね。勝数がタイの方が先輩なんですけど、既に引退して走ってないので、僕があと1回勝てば記録更新になります。6勝目になるのですが、その記録更新が今は一番大きいです。
その他にプライベートでは何か目標はありますか?
レースに向けての準備しかしていないので。やっぱりいい体づくりをするとか、レースに向けてが第一で、上限はないというか。少しでも疲れにくい体だったり、レースに向けてのことしか出てこないです。
後は、今年6年ぶりくらいに日本の最高峰クラスに戻るんですけど、周りの期待はすごく大きいです。過去一度勝ったことがありますが、その後歳は取りましたけど、衰えてないっていうのも見せないといけないし、海外行って成長してきた姿をしっかりみせられたらいいなというのが、今年の目標ですね。
そんな高橋選手の熱狂を支えている健康術について教えて貰えますか?
もともとあんまり食べない。気にして食べる方じゃなかったので、朝食べなかったりとか、下手したら昼も食べないで夜だけとか。
そういう中、海外に行って、海外でも似たような生活をしていて。イギリスの 2 年間も基本自炊をしていたんですが、いい加減な食生活で、そういうタイミングで坂田先生を紹介して頂きました。
そしたら、検査をして何が足りていないとかが見えるようになって。検査自体あまりしたことなかったので。スポーツって体が資本だと思いますから、検査をして、これじゃダメだなっていうのを改めて考えさせられました。
その後、サプリを処方して頂いて、検査結果で点数が出るのでこんなに違うんだっていうのを目の当たりにして。体感、実感というか、あまり感じれないタイプだったのですけど、いろいろ後から考えると疲労感が今までと違うなとか、効果が出ているように思います。
どんどん歳もとるし、レースライダーとしての寿命はそんな長くはないと思うので、少しでも伸ばせるように、体のことも考えなきゃいけないと考えています。
基本的に何もないときはジムに行ったりランニングやったりする毎日ですね。
運動量はそこそこしていると思うのですが、食生活は今まで全然気にしてなかった中で、朝食べないのだったら、プロティンを飲んでとか教えていただいて、一応考えて行動をするようになりました。
野望みたいな、ビッグビジョンとか、教えて頂けますか?
モータースポーツは日本ではどうも事故とかのニュースばかりが取り上げられるので悪い印象がつきやすいと感じています。過去においては物凄く盛り上がっていた時期もあったので、再び盛り上がっていって欲しいと考えています。
僕一人だけではできないし、協力して貰える人たちもいる。メジャースポーツの一つになって欲しいですね。
チーム監督が以前からモータースポーツを日本の国技の一つにしたいと想いを語られていて、僕も協力できる事はしたいと考えています。簡単にできるものじゃないと思いますが、少しでも知名度を上げて土台作りができたらと思います。
日本郵便さんがチームのメインスポンサーさんなのですが、興味を持ってサーキットまで来てくれる社員さんも年々増えているので、そういうところでも認知を広げるチャンスがあると思うし、少しでも広めていきたいですね。
編集後記
お茶飲みながら、高橋選手にレース中のことを伺いました。
最速で240キロも出る世界。どんな心境なのかをお聞きしたところ、物凄く冷静とのこと。
周回遅れの選手を抜かす時なども、集中すると共に、冷静でいますと語っていたのが印象的でした。
熱狂は「冷静」の積み重ねでできている、その「冷静さ」は30年間のレース人生の中で培われたものなのだと思いました。
スビードの中に「冷静さ」を持つ高橋巧選手に、本日インタビュー受けて頂いたこと、心より御礼申し上げます。
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2024 FIM世界耐久選手権
鈴鹿8時間耐久ロードレース 第45回大会
2024年7月19日(金)~21日(日)開催
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