
美容クリニックの経営者の多くは、マーケティングに注力し、価格競争に明け暮れています。しかし、その結果として起きている現象は皮肉なものでした。
今回は、東大から国立大の医学部へ転向し、メンズ美容に特化したクリニックを運営する神林先生との対談をお届けします。「髪を生やしたい人は来ない。すでに整った人がさらに差をつけに来る」
——開業から5年で見えてきた美容医療の真実は、私たちの健康観を根底から問い直すものでした。
男性の外見向上が収入増加に直結する裏付け、人間ドックに200万円かけるより効果的な健康投資、そして世界から取り残される日本の医療システムの構造的問題とは。美容医療と予防医療、二つの専門家が本音で語る、これからの健康戦略に迫ります。
第1部:異色の経歴が導いた美容医療への道
坂田:今日は「栄光への道」ということで、神林先生のお仕事と健康についてお聞きします。医師を目指したきっかけから教えてください。
神林先生:最近の医者になる人って完全に2パターンで、一つは実家が医者家系、もう一つは、良いとされているから行く、出世コースの一つとして選ぶパターンです。
私は全然医者家でもなんでもなく、群馬の本当に田舎の一般家庭で育ちました。田舎って価値観が狭いので、もっと広い世界に行きたいという思いがあって。小学生の時に「美女と野獣」がリリースされて、主人公のベルが「狭い田舎じゃなくて、もっと広い世界に行きたい」って言って世界を探検していくのが、すごく心に刺さったんです。
それで勉強して東大に入りました。理科二類で物理が得意だったんですけど、行ってみるとすごい男性社会で。官僚になるとか大企業で出世してとか、男性社会構成なので、自分が自立して生きていくのにちょっとそぐわないなと。意外にも専業主婦が人気で、エリートの女性でも結構そういう方が多くて。

坂田:それで医学部へ?
神林先生:はい、2年の時に中退して、国立縛りで医学部を受け直しました。1年で受かって。親は「せっかく入ったのに」という雰囲気でしたが、意志が強いんですよね。普通の人生を生きられない病気だと思います(笑)。
美容をやりたいと思ったのは医学部の学生時代です。もともと芸術とかきれいなものがすごく好きで、学生時代は化粧品をずっと研究していました。雑誌読んだり、論文引いてみたりして検証して。当時はすごく詳しかったです。その時に化粧品プロデュースはしたいなと思っていました。
坂田:その後のキャリアは?
神林先生:女子医大で初期研修して、皮膚科に入局しました。女子医大の皮膚科出身の先生が美容で有名な方が多かったので。その後、大手の全国展開している美容クリニックで5、6年働きました。すごい勉強になりましたね。実際の手技や知識はもちろん、ビジネス的なところも。闇の闇も見ましたし(笑)。
坂田:戦場みたいな?
神林先生:そうです。国境なき医師団が戦場で経験積むみたいな感じです。500円でボトックスできますみたいな集客をして、新人の先生からベテランまで色々いる中で、よくわからないまま臨床に出たりもする。知識で学んでも実際違ったりするので、少しずつ磨かれていく。
ビジネスってそうなんだなって。割り切れたかというと、今でも割り切れてないです。日本の美容が無法地帯になっていて、美容は何でも悪いみたいなイメージも形成される。システムが残念ですよね。

第2部:メンズ美容クリニックという新境地
坂田:2020年5月に開業されましたが、コンセプトは?
神林先生:私自身が結構「中身が男」なので、若い女性のSNS文化とかよくわからないんですよ。自分の感性に合う人たち相手の方がいいと思って、中高年男性だったら合うかなと。
女性の中でも一部の人って、深刻に美容を捉えて、生きるか死ぬかみたいな、老けていくことを許容できなくて若さにしがみつく必死さがある。私はその必死さがちょっとわからなくて。
美容大好きですけど、人間の本質はそこじゃない。自分がよりよく生きるためのプラスアルファであって、過半数を超えることはないと。
男性って見た目が美しいことが存在価値じゃないと思うんです。ただ、仕事で人に見られるのだったら、いい感じでいたいとか、なるべく若々しくいたいみたいな。その感性が自分に合うんです。

坂田:時代的にも男性美容が来ていますよね。
神林先生:この5年で男性向けマーケティング市場が100倍ぐらいになったんじゃないですかね。でも私の実感ですけど、男性そんなに熱心じゃないので、本質的な需要は圧倒的に女性ですね。年収1000万円の女性が美容に100万円かけるとしたら、年収1000万円の男性は10万円がせいぜい。
メンズ美容クリニックは最初はごく普通に始めたんですが、世の中にメンズ美容がなかったので、わかる男性がちょこちょこ来られていました。最近は安くするところが他にたくさん出てきて、うちには経済的にかなり余裕のある人しか残らなくなった結果、イメージ的に高級ハイブランドみたいになっていき、それで行くことにしました。
第3部:「差をつけに来る場所」という発見
坂田:どんなお客さんが来るんですか?
神林先生:面白いことに気づいたんですよ。もう少し髪の毛に気を使った方がいいんじゃないですかみたいな方はあまり来られないのです。反面、すごくかっこよくて整っていますけど、「更に何かやりますか」みたいな人の方がむしろ来て頂ける。
悪いものを改善しに来る場所じゃなくて、差をつけに来る、勝ちに来る場所なんだなって。
坂田:なるほど!
神林先生:若い方ですと、普通っぽい男の子じゃなくて、エリートなイケメンとか、すごくかっこいいお客様が多くて。そんなつもりはないけど、差をつけに来る場所なんだなって。
面白いデータがあって、実は女性からよりも男性からの方が、イケメンに対してひれ伏してしまう傾向があるらしいのです。アメリカの陪審員制度での実験で、同じ犯罪でもイケメンの方が判決の時に圧倒的に刑が軽かった。その刑を軽くさせる度合いが、女性陪審員からよりも男性陪審員からの方が甘いんです。
外見が美しいと収入が増えるみたいな度合いも、女性よりも男性の方が大きいらしいんですよ。だから実は男性が見た目をよくするインパクトって、男性自身が求めている資本主義的に勝つっていうのに、すごくプラスなんです。
坂田:僕ら予防医学マイスターへのご相談者も最近、男性顧客が増えてきていますね。45歳を過ぎて気づき始めた。「坂田さんのような50歳になりたい」って。
神林先生:希少価値だと思いますよ。50代前後で整えている男性って少数派になるじゃないですか。
坂田:二極化が進みますよね。健康になってほしい人には全然響かないのに、すでに健康的に見える人が「僕もやります」とか積極的だったりします。
神林先生:そうなんですよ!元々かっこいい人、テストで80点取っている人を90点にするのは大変じゃないですか。でも40点の人が60点になるのって結構楽なのに、やればいいのにと思うんですけど。不思議ですよね。

第4部:日本の医療システムが抱える根本問題
坂田:私たちが出会ったのは2023年12月18日でしたね。インスタでメッセージを送らせてもらって。
神林先生:先生が私をフォローしてくれたんですよ。それで坂田先生の製品も使わせてもらったら、すごく良かったんです。
坂田:日本って「安いのはいいことだ」という文化なんですかね。
神林先生:ユニクロとか無印、ニトリ、成功してる企業ってそういう企業が多いんですよ、日本って。安い割にちょっといいっていうのが一番受け入れられる文化。でも医療で高品質なものって、そうならないんです。
日本の医療システムって、いい部分はもちろんいいんですけど、完全に社会主義なので。基本は資本主義でビジネス的なのに、医療だけそれで通そうとするから歪みが出てるんですよね。
イギリスに留学した時に学んだのは、完全にプライベートクリニックとパブリックに分かれてるんです。人によっては高級なプライベートしか使わない人もいれば、パブリックを利用する人もいて、結構自由にやっている。そういう選択肢がある方が資本主義には適しているはずなんです。でも日本は混合診療を禁止して、法律でがっちり固められている。
坂田:血液検査項目で盛り上がりましたよね。
神林先生:一般的な健康診断の項目じゃなくて、これも調べてみよう、これも調べてみようで、二人で同じ日に血液をとって見比べるっていう。サプリをこういう風に取っている人じゃないと必ず悪く出る数字っていうのが、二人とも結構高くて、「これ人為的ですね」って(笑)。本当にマニアックな二人の時間でした。
人間ドックですごく詳しく検査して何百万て払うのが人気じゃないですか。でもめちゃくちゃ詳しく検査したら何かしらちょっとした異常は出ますよね。その異常に対して何言われるかっていうと、経過観察、もしくはサプリでも飲みますか。だったら最初から200万円分サプリ買った方がよくないですか。
日本って経過観察大好きですよね。調べた後にどうしたらいいかっていう時に、やりがちなミスは来年もまた200万円払って同じ検査を受ける。その過程において、何も健康に良くなってないじゃないですか。

第5部:共同開発サプリメントの哲学
坂田:一緒に作ったサプリメントについて聞かせてください。
神林先生:坂田先生のところは本当にプロ目線で色んな商品を用意されていて、一番いいのはパーソナライズされたものですけど、そこまではという方もいらっしゃるじゃないですか。そういう方向けにパッケージ化できたらいいなと考えて、坂田先生に相談しながら作ったものですね。
これの良さをわかってもらうには多分10時間ぐらいの講義が必要です(笑)。ちょっと生化学勉強してもらわないと困るみたいな。
でも1個だけ圧倒的に実感があるのが、アルコールのやつ。飲み過ぎた時に飲むと、本当に翌朝の辛さが全然違うので。
アルコール代謝って化学式決まっているので、アルコールが体内に入って、それがどう分解されて解毒されるか、そこに使われる酵素だとか臓器だとかを紐解けば何が必要かは明確なんです。それを経路に沿って入れただけ。
世の中のアルコールサプリって、20個成分が必要だとしたら、その1個だけ取り出したやつとか、2、3個だけ組み合わせたやつとかがいっぱいある。全部入れればいいだけなのに。そうすると、値段が高くなっちゃうから。

神林先生:私、実家に送っています、緑と青のラベルの商品を。旦那さんにも飲ませています。最初飲みたくなかったみたいで、ぶつぶつ文句言ってたんですけど、有無を言わさず(笑)。
坂田:これ見てもみんな分からないから、10時間の勉強の動画をセットして...
神林先生:売れなくなりますね。化学式と回路しか出てこない(笑)。

第6部:世界から取り残される日本
坂田:今後の野望は?
神林先生:日本は今、加速度的に世界から遅れていきつつあることをすごく感じていて。
医学部の時に、タイとか東南アジアからの留学生が来ていて、彼らって医学を英語でそのまま学ぶんですよ。なぜなら、もともと先進国ではないから、医学用語をいちいち自国語に翻訳されたものがないんです。だから英語ですべて学んでいるので、私たちよりレベル高いんですよ。
日本って先進国であったが故に、全部日本語に変換されているので、日本語の医学体系で知識が入る。つまり、日本語に翻訳された知識ベースがないと学べない状況なんですよ。
東南アジアの人たちより、私たちの方が情報が入るのが遅れる。日本語に翻訳されるのは、マーケティングされるもの、日本で広がるものじゃないと学んでも意味がないので、そうすると自然と世界レベルの情報へのアクセスがどんどん下がっていくんですよね。
坂田:日本はすごいっていう意識が強いから、みんなそのことに気づいてない。
神林先生:今はそれほどでもないけど、10年20年したらどんどん差が開くと思ってるんです。
少し前にアイスランドに旅行に行ったんですが、人口はものすごく少なくて田舎って感じなのに、一人当たりのGDPは日本の3倍もある。内訳見たら、エネルギーを輸出していたり、バイオ創薬とかが盛んだったり。日本のGDPの内訳は7割8割が内需じゃないですか。しかも安さ競争みたいな。
今の美容とか、韓国に憧れているので、私たちが。韓国は確かに進んでいるのは事実ですけど、世界からしたらマーケットの一つなので、限られた情報しか入ってこない。東京に行ったことがなく田舎にずっといるのと同じ。それに気づいていないんです。
私が今後やりたいこととしては、自分自身が世界レベルのアンチエイジングをキャッチアップしていって、それを日本でも希望する方がいたら提供していきたいと思っています。今、これまで学んだことを英語で学び直していて、できれば海外と繋がって勉強しながらやっていきたいですね。

対談を終えて
「東京を知らない田舎にずっといる」——神林先生は今の日本をこう表現しました。
東南アジアの医学生は英語で直接学ぶため、日本語の壁に守られた日本の医学生よりレベルが高い。美容ですら韓国の後追い。世界の最新情報から遮断されている現実。
でも、神林先生のクリニックに集まる「すでに整った男性たち」は、健康と美容を「投資」として捉え、その選択の正しさを収入という形で証明している。
健康格差は確実に広がっています。その分かれ道は「知ろうとするか、しないか」という小さな選択の積み重ねなのかもしれません。

医療法人社団Clara理事長 メンズクララ院長 神林由香
外見も。中身も。
生まれ持った良さを、最大限に引き出し魅力的に見せることを目指します。

